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ホームページ > 論文/書籍 > 法律考察 > 最高人民法院による『中華人民共和国会社法』の適用に関する若干問題の解釈(意見募集稿)のポイント

最高人民法院による『中華人民共和国会社法』の適用に関する若干問題の解釈(意見募集稿)のポイント

 2025-11-0129

「中華人民共和国会社法」(2023年改正)(以下、「新会社法」という)の施行(2024年7月1日から)により、会社に関する規制は大幅に改正された。これに伴い、現行の司法解釈は、新会社法との間に規定の不整合や解釈の衝突があるようになった。例えば、司法解釈三17条1項には、未払込株主が株主資格を失う実質的な要件を定めているものの、その実行に関する具体的な手続きに関する規定がないため、株主資格喪失の決議の効力が、人民法院の判決を待たなければならない場合が多く、新会社法52条1項の規定のように会社による直接的な権利を行使することができないという問題がある。なお、実務上では、法定代表者が辞任したにもかかわらず、会社は登記抹消を行わないと、元法定代表者はどのようにして登記を抹消し、登記による取引リスクを解消するかという現行法によって明確に定めていない新課題も生じている。

これらの課題に応え、会社に関する紛争を適切に解決するため、2025年9月30日、最高人民法院は「最高人民法院による『中華人民共和国会社法』の適用に関する若干問題の解釈(意見募集稿)」(以下「新解釈」という)を公布し、パブリックコメントの募集を始めた。

本稿では、新解釈の一般規定及び出資に関する特に重要だと思われるポイントを簡潔に紹介する。なお、特に表記しない場合、引用条文は新解釈の当該条文を指すものとする。

会社対外担保に関する規制の強化

会社法によれば、会社の株主又は実質的支配者のために担保を提供する場合、株主会の決議を経なければならない(会社法15条2項)。新解釈には、この規制をさらに強化し、支配株主や実質的な支配者が直接又は間接的に支配する他の会社に対象範囲を拡大している(2条)。即ち、支配株主又は実質的支配者が直接又は間接的に支配する会社に担保を供する場合も、株主会の決議が必要とされる。これにより、関連担保に伴う少数株主に対するリスクはさらに低減されると考えられる。各株主が担保を提供するかどうかを株主会で決定する際、対象会社との関係性を事前に判断しなければならない。

決議取消し訴えの判断基準の明確

現行司法解釈四4条と会社法26条1項によれば、会議の招集又は決議方法に軽微な瑕疵のみがあり、決議に実質的な影響を及ぼさない場合、当該決議は取り消すことができない。但し、9条2項によれば、決議取消しの訴えが提起された後、決議事項に賛成した者の数又はその議決権の数に変動が生じ、それが決議の成立に実質的な影響を及ぼさないと認められる場合、人民法院は取消しを認めない。これは、決議取消しの判断要件が、「軽微な瑕疵+実質的影響なし」から「賛成者数・議決権数の変動による実質的影響なし」へと変化したことを意味する。この改正が実現すれば、裁判官の判断は評価的なものから事実に基づくものとなり、訴訟結果の予見可能性が高まると考えられる。もっとも、賛成数や議決権数のみを取消しの判断要素とする第9条第2項は、他の株主の意思決定の自由に対する保護が不十分ではないかとの指摘もあり得る。

株主間契約の効力の明確化

中国法の下では、株主間契約の効力に関する明文の規定がなかったが、12条はこれを初めて明確化しようとする試みである。日本法と同様に、株主間契約は原則として契約当事者のみを拘束し、会社に対して対抗力を持たないものとされる。但し、日本の実務上では、株主全員が当事者となる株主間契約は、会社に対しても効力を有すると解されている。これに対し、12条は、日本の司法実務とは異なり、全株主による書面による決議、定款の定め、又は会社の決議がある場合に限り、株主間契約は会社に対抗できると規定している。この改正が実現すれば、株主間契約を会社に対抗するためには、関連する決議等を積極的に行う必要が生じると考えられる。

相殺による出資の効力の明確化

現行法の下では、株主が保有する会社に対する債権をもって出資義務を相殺できるかどうかは、いまだに明確されていない。民法典568条1項によれば、当事者が互いに同種の債務を負う場合、一方が自己の債務をもって相手方の期限到来した債務と相殺できる旨を定める。但し、債務の性質、当事者の合意又は法律の規定により相殺が禁止される場合はこの限りではない。司法実務においても、債務の性質を理由(出資は要式法律行為である)とし、相殺の効力を認めない判決((2019)滬02民終8549号)がある一方、相殺を有効と認める判決((2021)粤01民終6540号)もある。19条は、会社に破産原因がある場合等、破産手続の適用を除き、株主は会社に対する債権をもって出資義務と相殺することができる旨を規定する。この改正が実現すれば、株主は債権を回収すると同時に出資を履行するという効率的な方法を選択できるようになると考えられる。

株主資格喪失の責任の明確化

前述した通り、新会社法は現行司法解釈三を展開し、未払込株主の資格喪失に関する手続き及び効力を定めている(同法52条1項)。但し、新会社法は当該株式の処分方法を定めるにとどまり、資格を失った株主の責任についての規定を置いていない。26条1項によれば、株主資格の喪失により会社に損害をもたらした場合、当該元株主は損害賠償責任を負わなければならない。株主にとっては、期限までに出資を履行し、株主資格を維持することが重要となる。会社にとっては、損害賠償を請求するため、因果関係を立証できる書類(例えば、逸失利益を主張する場合の事業計画書や交渉記録など)を保存管理する必要があると考えられる。

おわりに

新解釈は、旧来の複数の解釈を統合し、新会社法が導入した法的枠組みを具体化するものである。今後の動向については、正式な解釈の公布を注視していく必要があるかと思われる。


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